【循環する京都を巡る】サーキュラーエコノミーデザインスクール体験記
2025年 11月 03日
京都市内で開催された「サーキュラーエコノミーデザインスクール」に参加し、そんな“循環”を肌で感じる一日を過ごしました。

国内外を旅をしながら、デザインとブランディングで各地のみなさまのお役に立つことを目的とした事務所です。デザインが人々にとって価値があるように、またデザインさせて頂いた地域が元気になることを心がけています。
2025年 11月 03日
京都市内で開催された「サーキュラーエコノミーデザインスクール」に参加し、そんな“循環”を肌で感じる一日を過ごしました。
講師は、COS KYOTO 代表でエドノミー®研究家の北林功さん。朝から晩まで京都の各地を巡りながら、「循環するデザインとは何か」を五感で学ぶ、まさに“体験の旅”でした。
北山杉に息づく、持続の知恵

旅の始まりは、北区中川にある北山杉発祥の地・八幡宮。
ここには「大杉」と呼ばれる御神木があり、私にとっては特別な場所です。
二十代前半、まだ木について何も知らなかった頃、材木商の社長に連れられて初めて訪れたのがこの地でした。
その時に感じた木の香り、苔むした杉皮の手触り、そして人の手と自然が共に生きる美しさ――あの日の感覚が、一瞬で蘇りました。
改めて学んだのは、北山杉がどれほど“循環”を体現した木であるかということ。
特に「台杉(だいすぎ)」という仕立て方は、一度植えた親木を切らずに、何度も新芽を伸ばし、世代を超えて使い続けるという驚くべき仕組み。
木を殺さずに利用する。そこには、先人たちの知恵と、時間を超えた自然との共生の思想が息づいています。
数寄屋大工の美意識と「T庵」

中川の数寄屋大工の工房では、北山杉がどのように“生かされる”かを見せていただきました。
数寄屋建築とは、素材の個性と真っ向から向き合う仕事。
「木は一本の命。その命を活かすのが我々の仕事」と語る大工の言葉が胸に響きました。
工房の二階には、千利休作と伝わる「妙喜庵・待庵(たいあん)」を原寸で再現した骨組み模型、通称「T庵」がありました。
壁も天井もないのに、そこには確かに“空気”が流れている。
柱と梁の間に漂う静けさの中に、侘び寂びの精神や、利休の思想が宿っているようでした。
形を真似るのではなく、精神を受け継ぐ。循環とは、形ではなく“心の継承”なのかもしれません。
加工場で見せていただいた丸太は三種類――磨き丸太、天然搾り丸太、人工搾り丸太。
特に天然搾り丸太の肌には、自然が刻んだ模様が美しく、一本一本がまるで生き物のようでした。
「人の手では作れない美しさ」が、ここにはありました。
銭湯がカフェへ。時間を循環させるデザイン

昼食は、北区の「さらさ西陣」へ。
築古の銭湯をリノベーションして生まれたこのカフェは、私が事務所を立ち上げた頃に話題になった空間でもあります。
あの頃、私も町家カフェを手がけ、同じ雑誌に掲載されたことを懐かしく思い出しました。
タイル張りの壁やロッカーの名残が、当時の記憶をそっと語りかけてくる。
建物を壊さず、時間ごとデザインに取り込むという発想。
それが20年以上も愛され続けているという事実に、心から敬意を覚えました。

その後に訪れた今宮神社の「あぶり餅 一和」では、“千年続く店”の凄みを体感。
変わらぬ味と、変化を受け入れる柔軟さ。
「不易流行」という言葉が、これほど自然に息づく場所はありません。
伝統を守ることは、止まることではなく、循環し続けることなのだと感じました。
いのちの森と、土の再生

午後は梅小路公園へ。
かつて操車場だった土地を再生し、人工的に作られた「いのちの森」では、街中に里山の環境が再現されていました。
子どもたちが田植えをし、稲を刈る。そこに流れる時間の豊かさに、未来への希望を見ました。
印象的だったのは、「土中改善」の取り組み。
石と落ち葉を層のように重ね、空気と水を土に通すだけで、死んだ土地が息を吹き返していく。
微生物の力が、土を変え、緑を呼び戻す。
その姿は、まさに“自然の循環”そのものでした。
また、公園のバックヤードでは、音楽イベントなどで出た食品残渣(ざんさ)を集めてコンポストを作り、堆肥に変える実験が行われていました。
食品廃棄物が土に還っていく過程を見せてもらうことは、非常に素晴らしい取り組みですが、同時に、北林さんが語った「危惧」も胸に残りました。
「堆肥化できるから廃棄しても良い」という誤った考えが広まってしまう危険。
本当の循環とは、“ゴミを出さないこと”そのもの。
エコという言葉が軽く消費されないよう、私たちデザイナーが“問い”を持ち続けなければならないと強く感じました。
法律の壁と、社会をデザインする視点

最後に訪れたブルワリーでは、ビール造りの副産物「麦芽カス」が堆肥として使えないという現実を知りました。
法律上は産業廃棄物とみなされ、循環が断ち切られてしまうのです。
「技術的には可能なのに、制度が阻む」――これこそが現代の課題。
サーキュラーエコノミーを進めるには、デザインや技術だけでなく、社会の仕組みそのものを見直す必要がある。
そんな当たり前のことを、現場で改めて痛感しました。
おわりに:設計ができる“循環のデザイン”へ
京都を一日巡って感じたのは、実はこの街そのものが、長い時間をかけて「循環」を体現してきたということ。
木を殺さずに使い続ける林業。
建物を再生させるリノベーション。
伝統を未来へつなぐ老舗の知恵。
それらが、日常の中で当たり前のように息づいていました。
私たちアトリエボンドも、この“京都の循環”に学びながら、次の時代のデザインを考えていきたいと思います。
地元の素材や職人の技を生かす「ローカルの循環」。
長く愛され、用途を超えて使われ続ける「時間の循環」。
土と緑を再生する「自然の循環」。
そして、制度の壁を越え、社会を変えていく「仕組みの循環」。
デザインとは、形をつくることではなく、未来を整えること。
その意識を胸に、これからも「循環する京都」と共に、持続可能な風景をデザインしていきたいと思います。
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