杉材の産地『山都町』へ
2012年 10月 17日
料理人がいい食材を求めて、産地を訪れるのと同じように、設計者もいい素材を求めて産地や生産工場を回る必要があると思うのです。
現在アトリエボンドでは、木のコーディネーターである木童さんと一緒に、日本各地の良質材を求めて産地を訪れ、国産材を活かした住まいづくりをしています。宮崎の都城と、ここ熊本の山都町の木を使っています。今回はその山都町を訪れました。
山都町はあの柔道の山下を生み出した街で有名ですが、石積みの橋が至る所で見られます。こちらは有名な霊台橋(美里町)です。
クレーンもない時代にどうやってこの石を運び、積み上げたのか?不思議で仕方ありません。
国の重要文化財です。それにしても美しく力強い橋です。
目的の山都町に入り昼食を頂きました。国民宿舎でアマゴ定食。初めてアマゴのお造りを頂きました。コリコリと歯ごたえがあり、川魚独特の臭みもなく、非常に美味しかったです。
こちらに柔道の山下の栄光の歴史が展示されています。こんな山奥で育ったんですね。街のヒーローです!
やっとお目当ての通潤橋が見えて来ました。中学校で習ったのを覚えていて、どうしても見たかったので、興奮しました。
横から見るとこんな感じです。スゴイ迫力でした。
上に上がるとこうして3本の石の管が通っています。
通潤橋は水のある方から、水のない方に水を渡すために出来ました。手すり等がないのでこうして見ていると、足を踏み外しそうで危険です。
空気が澄んでいるので、高千穂の方までキレイに見渡せます。美しい風景です。
これが実際に使われている石の管です。一つ一つ石を叩いて穴を開けています。気の遠くなる作業です。
そしてこちらが、石橋を積む際に使われた、木組の型です。これを造るだけでも大変そうですね。昔の人の技術の高さに驚かされます。
通潤橋を反対から見るとこんな感じです。通潤橋を通らない飽和した水が左から下の川に流れています。
人工的に作られた滝です。これはこれで迫力がありますね。
そしていよいよ目的地の産地に到着。周囲には杉や桧がたくさん植わっています。こちらには比較的小径木が置かれています。
丸太の断面に色んな情報が書かれています。
一通り置かれている材よお話と、山の事、これらの材を切り出す過程など、建築に直接関係ありませんが、大切な事を教えて頂きました。
そしてさらに山奥に入り、杉や桧の山の水源を訪れました。水と木は切っても切り離せない重要な関係にあるのです。
水源付近の木は大径木の木が伐られずに残しているそうです。特に水源付近なので管理も徹底されているそうですが、元々の美しい森のカタチがここにはありますね。
ここが水源。この岩の下から水が湧き上がっています。初めて目にして感動しました。
切っても切り離せない関係はここにもあります。山の神と
水の神が隣同士に祀られています。
水源だけに本当に水がキレイです。初めて水源の水を頂きましたが、柔らかく若干苔の香りもして、冷たくて美味しかったですね。貴重な経験をさせて頂きました。
山から下りて来てそのまま空港に向かう途中に、南阿蘇を通過。外輪山と呼ばれるカルデラの外側の山です。阿蘇の山には木がほとんど生えず、独特の風景が広がりますが、上からソリーで滑りたくなるような、キレイな山です。
ちょうど秋桜が満開で、あたり一面が薄いピンク色に染まっていました。
時々、地産地消と言われる時代に何故国産材と言っても、宮崎や熊本の木を使うのか?と言われますが、理想は建てる敷地の地元の木でありたいと思っています。しかし、使う事は容易でも、それを使って3世代が安心して住まう事の出来る住まいが創れるかどうかと言われると難しいですね。国産材というだけで使うのであれば、しっかりと乾燥した良質の外材を使うのとどう違うのか?と思います。でも出来る事なら国産材を使いたい。そして3世代あとまで安心して住まえる住宅の構造を作っておきたいというのが自分の想いです。材の選択と乾燥・加工がしっかりとなされていれて、構造部分が守られれば、世代を超えてリノベーションしたり、手を少し加える事によって、長期的に住まいとして永続させる事が出来ます。水分量が多い、赤身が少ない木を使うと、構造的な強度は大きく変わり、建物にすぐガタが来ます。10年経った頃に建物にひび割れがおきたり、歪んできた住まいをこれまでたくさん見て来て、相談も頂きました。そうした住まいを少しでも減らして、安心して住んで頂ける住まいを創るためには、こうして産地に足を運び納得出来る材料である必要があると思います。それでも本来自分がやりたいことはまだまだ達成されていませんが、少しでも安心して生活出来る住まいであり続けるために、デザインを残して行くためにも、この部分は非常に重要であると思います。もちろん産地の環境を知る事、伝えること、地球環境を考える上でも産地まで足を運ぶ事の重要性を感じて頂き、一緒に住まいづくリをさせて頂けたらと思います。
今回丸一日以上同行して下さったS林業のSさまありがとうございました。
アトリエボンドの事業は京都府の承認を頂いた事業です。
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